『ロスト・イン・ヨンカーズ』初日開幕直前会見


左より:長野里美(ガート)、中谷美紀(ベラ)、草笛光子(ミセス・カーニッツ)

●ご挨拶

三谷 二―ル・サイモンをやるのが本当に夢で、僕が大学生の時に始めてニール・サイモンをこの劇場で観て、――当時はまだ“西武劇場”と言っていたんですが――福田陽一郎先生の演出、杉浦直樹さんと石立鉄男さんが出てらっしゃった『おかしな二人』を、――本当に覚えているんですが――その席で観て、こういうお芝居を書きたいなと思って、それで今の僕があるようなものですので、本当に今回はこのPARCO劇場とニール・サイモンに御恩返しをしたいと思っています。

中谷 三谷さんの作品はこれで2作目になります。「清洲会議」(映画)という作品に続いて、こうして呼んで頂けたことに本当に感謝しております。今回の役どころはカーニッツ家の次女です。いつまで経っても心が子どものまま成熟出来ないという障がいを抱えています。それであるが故にとても繊細で傷つきやすく、時々衝動的に感情が激昂したりするんですけれども、そんなキャラクターであるが故に家族の台風の目のような存在であり、またバラバラになりかけていたカーニッツ家をまとめる緩衝材のような役割も果たしています。素晴しい家族に恵まれて、毎日稽古をして参りました。是非ご覧いただけると嬉しいです。

松岡 僕は三谷さんの作品は初めてなんですけれども、ずっと興味があったものですから、声を掛けてくださった時「ああ、演らせて貰えるんだ」という嬉しさと、そして僕はこのPARCO劇場がとても好きで、何度も足を運んで色んな方のお芝居を拝見していて、「自分がPARCO劇場に立てるんだ」という二つの喜びを今味わっております。とっても楽しい作品になっていますので、是非ご覧になってください。

草笛 いよいよ来たな、と思っています。三谷さんの舞台に一度私も混ぜて頂きたいと思っていました。オファーを頂いて、とたんに難し〜い役を頂いてしまって、頂いた時から緊張のしっぱなしで、神経がこんがらがったみたいです。でも、とても気を使って下さって、演らせて頂いています。笑いの無い役で、全然笑いません。それで、私が出て来る前はウチの子どもたちがボロクソに私の悪口を言います。悪口言われて出て行く役です。何と辛いことか・・・でもとにかく、良い言葉がいっぱい散りばめてある作品で、私も言っていて胸に応えています。

小林 三谷幸喜作・演出の作品には多数出させて頂いておりますが、三谷さんの作ではない作品で演出というのは初めてで、しかもニール・サイモン作、それも代表作の一つ、もう非常に光栄でありますが、非常なプレッシャーも掛かっております。でも総領の甚六と申しますか、本当にだらしのない父親ですけれど、その分息子たち二人が逞しく育ってくれて、約1年厳格な母の元で彼らが暮らす。その彼らから見た我々大人という世界を描く作品になっております。明日初日を迎えますけれども、必ずや楽しい作品になると思いますので、ご期待ください。

長野 待ちに待ったPARCO劇場の三谷作品、しかも大好きなニール・サイモンという事で、舞台に立たせて頂くのがもの凄く嬉しくて幸せです。ただこの難解な役、息を吸いながら喋るという難解な役と、出番待ちの長さに大分とまどって昨日まで試行錯誤を重ねて参りました。出てきた時にあまりに自分が嬉しくて余計な事をしないように楽しく演らせて頂きたいと思います。

浅利 僕はPARCO劇場は初めてで、とてもドキドキしていて凄く新鮮な気持ちで、今回二度目の三谷さんとの舞台をやらせていただいております。今回とても濃い方々がいらっしゃって、その人たちに家に放り込まれた息子二人という役をやるんですけれど、毎回毎回稽古場でも、昨日も本当に翻弄されながら、笑いをこらえながら一生懸命やっております。明日の本番は間違いなく面白い作品になると思いますので、是非よろしくお願い致します。

入江 僕は今回オーディションでこの役を頂いて、まさか自分が三谷幸喜さんの作品に出られるとは思ってもいなかったので、本当に最初はビックリして、出演される大先輩方の名前を見てまたビックリして緊張して、でも稽古場で一ヶ月稽古を重ねていく中で、本当に気付く事、学べる事、自分の成長に繋がる事を沢山発見させて頂きました。本当に充実した毎日を送らせて貰っています。アーティは10ヶ月間カーニッツ家の中で色んなおかしな人を見ながら成長するんですけれど、そのアーティの成長に負けないくらい僕もこの舞台を終えた後、もっと大きな役者になれたらと思っています。

● 初めてニール・サイモンの作品を演出されていかがでしたか
三谷 最初に一つ訂正が有るんですけれど、学生の時に『おかしな二人』をそこの座席で観たと言いましたけれど、こっちでした(一同爆笑)。本当にニール・サイモンは手強い作家だなと思いますけれども、僕は本当にニール・サイモンが大好きで、ニール・サイモンをお手本にして、例えば台本を自分で全部書き写したりして勉強した頃もあった訳で、だから、ちょっと一体化している部分もあってですね、通し稽古とか見ていても本当に――自分で言うのもなんですけれど――素敵な舞台で、毎回観て感動して「何ていいお芝居なんだろう」と思ってます。いいのは俳優さんたちでありニール・サイモンの本であり、僕が介入している部分は少ないんですけれど、僕が書いたみたいな気持ちになってですね、「俺、凄いの創っているぞ」みたいな、ちょっとどうかなっちゃっている感じがするくらいニール・サイモンと一体化しているので、本当にいい機会を与えて頂いたと思います。凄くニール・サイモンの勉強になっていますので、お金を頂いて勉強させて頂くのは本当に申し訳ないんですけれど、本当にPARCOさんには感謝しています。これからますます飛躍していこうと思います。今後とも宜しくお願い致します。

● 中谷さんはPARCO劇場で2011年に一人芝居『猟銃』をされましたが、今回初めて会話劇に挑まれていかがですか
中谷 私は舞台が入江くんと同じで2回目なものですから、一歳くらいの感覚で――今、37歳なんですけれど――37歳の新人で、まだ右も左も分からない人間が三谷さんの演出によって、本当に自分自身が変わり成長していくのを感じておりますし、お金を頂いて勉強させて頂いて申し訳ないんですけれど(笑)、私も勉強させて頂きます。また小林さんは三谷組の常連でいらして、三谷さんの心を全て解っていらっしゃるので、色々と解らない事を教えて頂きますし、長野さんも長い間舞台を牽引してきた大先輩ですし、浅利くんも舞台の先輩で、この二人は一番若くて一番落ち着いているんです・・・よね。(浅利 そうです(笑))
意外と若いのに一番落ち着いていて助けられています。またルイさん(松岡)は役柄そのもののような家族を本当に率いて下さって、そしてカーニッツお母さん(草笛)は大変厳しい役柄ではあるのですが、いつも稽古の折に梨や葡萄の差し入れをしてくださって、美味しいものを沢山いただいて、愛情を沢山いただいています。

● 松岡さんは三谷作品初出演になりますが、稽古の一ヶ月間はいかがでしたか
松岡 三谷さんは番組でご一緒させて貰ったことがあるのですが、こういった形で稽古をして貰うのはもちろん初めてで、多分皆そうだと思うんですけれど、自分たちが考えていない意識していないところにポンと、フワッと演出をなさる方ですね。そのフワッとしたいい感じのものが、凄く心地いい。キツ過ぎず。とてもシャイでいらっしゃるので、僕が勝手に三谷さんを「シャイな目立ちたがり」って呼んでいるんですけれど、そのシャイな部分が、――僕が喋っているこの時間が、三谷さんには凄く嫌な時間なんですよ。自分の事を言われているのが一番嫌な時ですから――そういうコミュニケーションを取らせて貰っている内に、たまたま一人っ子のA型であることが発覚しまして、一緒なんである種の共通点が有るせいか、僕がちょっと失敗して恥ずかしいから誤魔化しているところを後でわざわざ言いに来るんですね(笑)。その辺は初めての経験なので、とても楽しませて貰っています。

● 一人っ子のA型について、何か言いたい事はありますか
三谷 ちょっと聞いてなかったです。(一同爆笑)

● ありがとうございます(笑) 草笛さんは1992年に同じこの難役に挑まれて、今回21年ぶりに再び挑まれるお気持ちはいかがですか
草笛 もう21年、随分前に演らせて頂いたのですけれど、その時の事は良く覚えていないんですね。こんなムードで出て、こんな事を言ったかな、くらいは思い出しますけれど、今はなるべく昔の事は消しまして、新しく三谷演出で私は新しいお祖母ちゃんを演るつもりで来ております。

● 稽古をなさって、三谷さんが感じた俳優の新たな魅力、見出された新たな一面がありましたら教えてください
三谷 小林さんと浅利さん以外は、舞台では初めて会ったのですけれど、例えば一人っ子A型の松岡くんは・・・
松岡 聞いているじゃないですか(笑)
三谷 もうちょっとチャラチャラした人かと思ったら(松岡大爆笑)、こんなに台本を読み込んでセリフの裏の意味を考えたり、役の裏のキャラクターを考えたりとか、本当に細かい所深い所まで勉強されている。「この人は民藝の俳優さんじゃないか」っていうくらいちゃんと台本を読み込んでいらっしゃるのでビックリしましたし、中谷さんは物凄くきちんとして、さっきのコメントも本当に素晴らしくて、言葉の間に「・・・かつ・・・」みたいになっていて、「かつ」という言葉を入れる人を初めて見たというか、書き言葉ですから、本当に素晴らしいなと思うんですけれど、稽古場では意外にボケまくってまして、とにかくやたら寝てしまう。「大丈夫なのか?」と思うくらい寝ていたりとか、平気で僕の前を大あくびして通り過ぎたりする、かなり自由で、我が家のリビングルームのように過ごしてらっしゃる中谷さんがとても意外で、素敵な方だと思いました・・・
中谷 素敵なんですか・・・
三谷 もちろん素敵なことですよ。そして草笛さん。とても美しくてお元気で、今は杖を持ってらっしゃいますけれど、これは役作りで実際はスキップしながら稽古場に来られるくらいお元気な、本読みの時から役作りをされていて、完璧で、ご本人は僕に「何でもダメだしして下さい」って仰るんですけれど、ダメだしのしようが無くてあら捜しみたいになってしまって、本当に申し訳ないくらい素晴らしいです。むしろ自分の名前を間違えた小林隆の方がちょっと年齢的な心配を今しているくらいです。オーディションで来てくれた入江さんを含めて、今回は最高の座組だと思っていますし、これ以上のメンバーでのニール・サイモンというのは、空前絶後、今後もないんじゃないかというくらい凄く手応えを感じてやらせて頂いています。

● 三谷さんの思い入れの強いニール・サイモンですが、今回の演出でこだわった所などを教えてください
三谷 特に変わったことはしていないんですけれど、僕が自分に決めたテーマというのは、「とにかく可能な限り台本どおりにやろう」と。もちろん翻訳に関して少し自分で手直しはしましたけれど、ほぼ元の台本どおりにやって、その上で笑えるニール・サイモンにしようと心がけています。翻訳口調になってくると「あ、このセリフって面白いんだろうな」と思いつつも笑えない部分が有ったり、僕も客席で観ていた時にそんな事を感じるんですけれど、そこも含めてなるべく自然な、僕らが今、普段使っているようなセリフ回しを生かしつつ、そして笑える。多分、ニール・サイモンの『ロスト・イン・ヨンカーズ=ヨンカーズ物語』がこんなに面白い、こんなに笑えるコメディだったんだ、ということは初めて皆さん気付かれるんじゃないか、というくらいきちんとやっていますけれど、それを僕が勝手に加えたものではなくて、元々の台本にあったものをなるべく掬い取ろうという努力をして出来上がったものだという風に思って頂ければと思います。

●特に注目して欲しいシーンを教えてください
中谷 バラバラになりかけた家族が纏まりつつある瞬間というか、纏まりつつあり、また崩壊しつつある、本当に危ういバランスで成り立っているシーンが有るんですね。それは家族で食事をし、家族会議をするシーンなんですけれど、そちらは各々のキャラクターがよく個性が描かれているシーンなので、是非注目してご覧頂きたいです。
松岡 エディの小林隆さんの汗の量です。
長野 それ、シーンじゃないです。
小林 いやいや、観て貰いたい。
草笛 本当に皆さん個性の強い方ばかりで、私だけ個性が無いんですね。
三谷 えっ!
草笛 皆さん方本当に個性がはっきりと、ニール・サイモンがそう書いている事も確かですけれど、私は頭が下がります。皆さんの演技に舌を巻いていますので、どうぞご覧下さい。素晴らしいです、ウチの家族は。ちょっと皆可笑しいですけれど。
小林 私エディが母に託す、ジェイとアーティの奮闘と巻き込まれ、ここを全編を通してお楽しみください。
長野 面白いところはいっぱいありますけれども、私は自分が出ていないところを袖で観ていて、お祖母ちゃんが一人取り残されるシーンが二箇所有りますが、見逃せません。
浅利 僕は最初に初めてお祖母ちゃんと兄弟が会って、父さんとベラが4人で居て、これからここで暮らすか暮らさないかという凄く緊迫した、お祖母ちゃんが登場するシーンですね。そこがとっても僕の中では好きなシーンです。
入江 家族全員で食事をするシーンがあるんですけれども、そこの、ちょっと触ったらすぐ壊れてしまいそうな不安定なバランスの家族の関係を皆さんにハラハラしながら観て頂けたら嬉しいなと思います。

     三谷幸喜×ニール・サイモン『ロスト・イン・ヨンカーズ』

 

パルコ劇場40周年記念
パルコ・プロデュース公演『ロスト・イン・ヨンカーズ』

公演情報

キャスト ベラ 中谷美紀
ルイ  松岡昌宏
エディ 

小林隆

ジェイ  浅利陽介
アーティ  入江甚儀
ガート  長野里美
ミセス・カーニッツ  草笛光子 

スタッフ 作:  二―ル・サイモン
上演台本・演出:  三谷幸喜

 

東京公演
日程 2013年10月5日(土)〜11月3日(日)
会場 パルコ劇場 (渋谷パルコパート1 9階)
料金

一般料金:8,500円 (全席指定・税込)

 U-25チケット:6,000円
  (25歳以下対象・当日指定席券引換・平日限定・要身分証明書)
  ※U-25チケットはチケットぴあ・前売り販売のみ取扱い

問い合わせ先 パルコ劇場 03-3477-5858


福岡公演
日程 2013年11月12日(火)〜11月14日(木)
会場 キャナルシティ劇場
料金

8,500円 (全席指定・税込)

主催 テレビ西日本/ピクニック
問い合わせ ピクニックチケットセンター 050-3539-8330


宮城公演
日程 2013年11月16日(土)〜11月17日(日)
会場 多賀城市民会館
料金

8,000円 (全席指定・税込)

主催 仙台放送
問い合わせ 仙台放送 022-268-2174


大阪公演
日程 2013年11月19日(火)〜11月26日(火)
会場 森ノ宮ピロティホール
料金

9,500円 (全席指定・税込)

主催 関西テレビ放送/サンライズプロモーション大阪
問い合わせ キョードーインフォメーション 06-7732-8888


愛知公演
日程 2013年11月29日(金)〜11月30日(土)
会場 稲沢市民会館
料金

S席:9,000円 A席:7,500円 (全席指定・税込)

主催 メ〜テレ
問い合わせ メ〜テレ 052-331-9966


神奈川公演
日程 2013年12月3日(火)〜12月8日(日)
会場 KAAT 神奈川芸術劇場 ホール
料金

S席:8,000円 A席:6,000円(全席指定・税込)

 U24(24歳以下):4,000円
 シルバー割引:7,500円
 高校生以下:1,000円
  ※高校生以下、U24、シルバー割引は、
   チケットかながわ(電話・窓口)のみで取扱。

主催 KAAT 神奈川芸術劇場
 (指定管理者:公益財団法人神奈川芸術文化財団)
問い合わせ KAAT 神奈川芸術劇場 045-633-6500

 

 

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