ピーター・ブルック最新作『ザ・スーツ』絶賛公演中 超貴重な独占インタビュー動画も公開

THE SUIT
© Pascal Victor-Artcomart

 1973年の『真夏の夜の夢』を皮切りに、『カルメンの悲劇』(1987年)、上演時間9時間の大作『マハーバーラタ』(1988年)、『桜の園』(1989年)と来日公演を行い、日本の演劇史にその軌跡を深く刻みこんだ演出家、ピーター・ブルック。

 その著書で15カ国以上で翻訳出版されている「なにもない空間」の書名にもあるように、“なにもない空間”という自身の演劇論に基づくシンプルな舞台装置でありながら、俳優の肉体と小道具を巧みに利用してイマジネーション豊かな劇空間を生み出すその手法は時に魔術的とさえ言われ、世界中の観客に衝撃を与え、演劇人に影響を与えてきました。

 昨2012年3月には『ピーター・ブルックの魔笛』が来日するなど、88歳にしてなお斬新で意欲的な創造を続ける現代演劇界の巨匠・ピーター・ブルック。その最新作で、これまで世界10カ国21都市で上演され絶賛されている話題の舞台『ザ・スーツ(THE SUIT)』が来日し、11月17日(日)まで、東京・渋谷にあるPARCO劇場で上演中です。

 この作品は南アフリカ出身のキャン・センバによる小説「ザ・スーツ」を翻案した舞台で、ピーター・ブルックが1999年に初演した作品を、昨年2012年にBouffes du NORDで『魔笛』のクリエーションチームとともにあらたに創作した新作。
この小説に描かれている夫婦、男と女、あるいは社会における女性の居場所、社会の中での立ち振る舞い等様々なテーマが現代に蘇り、そしてその舞台上での姿を変貌させ、今、あらたなクリエーションが誕生しました。

 物語は中流の弁護士であるフィロメンとその妻マチルダという夫婦を中心に進行します。
タイトルの「スーツ」とはマチルダの愛人のスーツで、愛人と妻の不倫カップルがまさに事に及んでいる真っ只中にフィロメンがその場に踏み込んだため置き忘れられたもの。妻を責め続けるように、夫はそのスーツを大切な客としてもてなすよう命じ、不倫したことを片時も忘れないように、彼女はそのスーツを食事の席に同席させ、楽しませ、散歩にも一緒させなければなりません。
舞台は1950年代の南アフリカ、ソフィアタウンという雨の多い黒人居留区で、センバがこの小説を書いてまもなくなくなってしまった町ですが、芝居の中では、この不幸なカップルと同じ位の存在感を発揮します。

 この物語に通奏低音のように流れる「罪」と「戒め」という言葉たち。しかし、それはただ重々しく私たちに伸し掛かるのではなく、シューベルトの歌曲からアフリカンミュージックに至るまで、幅広いジャンルの生演奏で響かせます。
時には力強く、そしてせつなく響く歌声とともに進むドラマ『ザ・スーツ』
舞台は数個の椅子とテーブル、そして衣裳ハンガーのみ。このミニマムな小道具たちがその劇世界と演じる俳優とともに創作していく『ザ・スーツ』。

 ピーター・ブルックがこの作品を創作しなおすにあたった動機の中で「劇場において、そのままの姿で存在し続けるものは何ひとつない。使い古されるだけのテーマもあるが、長い時を経て蘇るテーマもあるのだ。」と語っています。

 そんなピーター・ブルックが本公演のためだけに作品の創作の秘密を語った、独占インタビュー動画が現在、公式サイト上で公開中です。
世界中のメディアの取材オファーが殺到する中、現在では、取材をほとんど受けていないブルック。
『ザ・スーツ』はどのようにインスピレーションを得て創られたのか、俳優はどのように選んだのか、ブルックの音楽の役割に対する考え方、等が語られている30分以上の大変貴重なインタビュー動画は、演劇ファン・関係者ならば必見と言えるものでしょう。

 「なにもない空間」から観客の想像力を最大限に引き出し、そこで繰り広げられるドラマが「今、ここで起こっている出来事」としての体験を共有するピーター・ブルックの魔法にかかる75分。
『ザ・スーツ』はその劇空間を存分に堪能出来る、またとない機会を与えてくれる作品です。

パルコ劇場40周年記念公演
ピーター・ブルックの『ザ・スーツ(THE SUIT)』

(英語上演 日本語字幕付)

 

公演情報

スタッフ 原作: キャン・センバ モトビ・マトローツ バーニー・サイモン

演出・翻案・音楽:  

ピーター・ブルック 
マリー=エレーヌ・エティエンヌ 
フランク・クラウクチェック

 

キャスト ジョーダン・バルボア、リッキ・ヘンリー、
イワノ・ジュレミア、ノンランラ・ケズワ
アーサー・アスティア(guiter)、ラファエル・シャンブーヴェ(piano)、
ディヴィッド・デュピュイ(trumpet)

 

東京公演
日程 2013年11月6日(水) 〜2013年11月17日 (日)
会場 パルコ劇場
料金

8,400円 
U-25チケット4500円(25歳以下対象)(全席指定・税込)

問い合わせ先  パルコ劇場  03-3477-5858

 

 

その他の写真

クリックすると拡大して表示されます
 

 


CD DVDを探す