いのうえシェイクスピア『鉈切り丸』東京公演上演中
左より:成海璃子、生瀬勝久
初の武士政権である鎌倉幕府を創設した源頼朝の異母弟で、源義経の異母兄。木曾義仲・平氏追討に功績をあげ、源氏一門として鎌倉幕府の重鎮でありながら、鎌倉期を写した「吾妻鏡」に大きく記されることなく、いまだ謎の多い、源範頼(みなもと の のりより)。
世界の名優が一度は演じたいと願う究極の役と言われ「残忍冷酷、醜悪不遜、奸智奸才」。怪異な容貌を持ちながら巧みな話術で人を惹きつけ、王位への野望のためには、身内のみならず妻や家来まで嬉々として犠牲にして厭わない、シェイクスピア作品登場人物史上の最悪党、リチャード三世。
この二つのキャラクターに触発された演出家・いのうえひでのりのプランの元、青木豪が書き上げたのは『リチャード三世』を鎌倉時代に置き換えた新作劇『鉈切り丸』。大熱狂となった大阪公演を経て、11月8日に東京・渋谷にある東急シアターオーブで東京公演が開幕いたしました。
日の本、鎌倉期。
時は血で血を洗う武士の時代。
今、ひとりの侍が、天下を獲りに動き出す。
歪んだ背中に溜まった赤黒い憎悪に衝き動かされて。
悪逆非道は正義−とくとご覧あれ。
舵切りが悪を尽して、天に駆け上る様を!
歴史には名を留められなかった悲劇の大悪党“源範頼”(=鉈切り丸)にV6の森田剛を迎え、ヒロイン“巴御前”を演じるのは今回が堂々の初舞台となる成海璃子。
共演者には、意外にもいのうえ作品初参戦となる生瀬勝久(源頼朝)、麻実れい(建礼門院)、若村麻由美(北条政子)、久しぶりのいのうえ作品参加となる秋山菜津子(イト)、渡辺いっけい(梶原景時)、加えて、千葉哲也(武蔵坊弁慶)、山内圭哉(大江広元)、宮地雅子(比企尼)ら実力派の俳優陣に、木村了(和田義盛)、須賀賢太(源義経)ら期待の若武者も集結、劇団☆新感線常連メンバーから河野まさと、村木仁、川原正嗣他アクションクラブも参戦し、これ以上ないドリームキャストが結集。
そこに岩代太郎書下ろしのオリジナル楽曲を生演奏するミュージシャンたちが加わって、豪華絢爛“いのうえシェイクスピア”の真骨頂とも言える話題作です。
初日を前にして行われた会見では、
森田「大阪でやって来ましたし、その勢いのまま東京も行けたらいいなと思います。」
鳴海「体力勝負というところで少し痩せたかも知れませんが、身体を大切に東京も乗り切ろうと思います。」
生瀬「痩せていないですが(笑)、10日間くらい間が有ったので、その間はずっとランニングをして東京公演を乗り切ろうと思って、体調は万全です。」
と、それぞれが万全の体制で臨む姿勢をみせます。
主役を務める森田剛は、鎧・マントなど重い衣裳を身に付け、猫背で背中にコブ、片足を引きづりながら殺陣も行うというハードな役どころ。体力勝負となりますが、
「今は普通に立っている方が辛いくらいで、猫背の姿勢の方が楽だったりするんですよ。ちょうどいい位置も自分の中で見つけられたので、これで最後まで行けそうです。演出のいのうえさんの要望も、足が悪いけれど瞬間的なスピードは凄く早かったり、そこが範頼という役の奇妙な部分なんです。」と、自信のコメント。
暴力シーンや際どいシーンも有るという、初めて演じるダークヒーローにも
「悪役は楽しいですね。身体は疲れていても、終わった後にどこかスッキリしている自分が居るので、凄く楽しく演れています。」と手応え充分な様子です。
一方、殺陣などはあまり無く、もっぱらお笑い担当という生瀬勝久は
「僕は箸休め的な感じで、全体的には非常に暗くて陰惨な話なんですけれども、それだけじゃなくて楽しいシーンもありますし、踊りもある。殺陣回りなんて、本当にそれだけでも一見の価値があるくらいだし、セットにも仕組みとか色んな仕掛けがあるんです。とにかくトラック27台ですよ・・・数えてはいないんですけれど(笑)。それだけのものを仕込んで有る訳ですから、これを観に来なければ末代まで後悔しますよ。」と独特の論調で作品を宣伝。
これまでにないと指摘された源頼朝の役づくりにも
「でもそんな人だったかも知れないですよ。誰も頼朝見た人いないでしょ! だから今回の舞台のような人だったかも知れない。新しい頼朝です。毎日決めたお芝居をやらないので、(妻:北条政子役の)若村さんと楽しくやっています。毎日違うので凄く楽しいです。」とベテランらしい余裕を持って切り返していました。
そして、舞台初挑戦となるこの作品で、目の前で範頼に夫・木曾義仲を斬られても忠誠を尽くさんと気丈に振る舞い、範頼の復讐を誓う女性・巴御前を演じる成海璃子は、
「衣裳はそれなりに重たいですけれど、際どいシーンも楽しいです。可哀想な極み、みたいな役なのでボロボロになろうと楽しんでやっています。」
と、多少緊張気味なのか口数は少ないものの、笑顔を見せます。
「僕は喋り担当ですから」とトークで盛り上げる生瀬勝久、舞台で力を抜かずに動く事で皆が背中を見て頑張れるという森田剛。
大阪公演中には、生瀬らの誕生会で会食もしたというカンパニーが、改めて結束を固めて東京公演に臨みます。
会見の最後には、
成海「本当に凄く力のある、劇場で絶対に観て頂きたい作品なので、少しでも多くの方に観に来ていただけると嬉しいです。お願いします。」
生瀬「これはやっぱり映画でもない、テレビでもない、舞台です、演劇です。ナマのダイナミズムを是非味わって頂きたい。色んな知恵と汗と努力が結集した結晶です。是非劇場でご覧になってください。お待ちしています。」
森田「大阪で一ヶ月近くやってきて、完璧な状態で東京でお見せできると思います。人間の熱というかエネルギーを感じられる舞台だと思いますので、皆さん是非劇場に遊びに来てください。お願いします。」
と東京公演に向けてそれぞれの意気込みを熱く語り、観客に向けてアピールしていました。
W・シェイクスピアの『リチャード三世』を鎌倉時代に置き換え、源頼朝の弟・源範頼のミステリアスなキャラクターにスポットを当てた新作劇。
舵切り丸(なたぎりまる)が、剣術と権謀術数で、天下穫りに動き出す。
その野望の果てには、いったい何か待っているのか…
公演は11月30日(土)まで、東京・渋谷の東急シアターオーブで上演中です。
また、本作品の戯曲本「舵切り丸」(青木豪:著)と、岩代太郎がこの作品のために書き下ろしたオリジナルCD「舵切り丸〜舞台音楽集」が上演に合わせて発売されています。
【戯曲本】
「舵切り丸」青木豪・著
1、575円(税込)パルコ出版
【CD】
岩代太郎「舵切り丸〜舞台音楽集」
2,000円(税込) ※iTunesでも配信
開演時間・料金などの公演の詳細、ならびに戯曲本・CDの販売については公式サイトでご確認ください。
PARCO&THE GLOBE TOKYO presents
いのうえシェイクスピア『鉈切り丸』
公演情報
キャスト | 森田 剛/成海璃子、秋山菜津子/渡辺いっけい/ |
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千葉哲也、山内圭哉、木村 了、須賀健太、宮地雅子/ | |
麻実れい/若村麻由美/生瀬勝久 ほか | |
ミュージシャン | 松崎雄一(キーボード)、稲葉明徳(篳篥)、 |
岡部亘(パーカッション)、山田智之(パーカッション) |
スタッフ | 脚本: | 青木豪 |
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演出: | いのうえひでのり | |
音楽: | 岩代太郎 | |
企画・製作: | (株)パルコ・東京グローブ座 |
日程 | 2013年10月12日(土)〜10月26日(土) |
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会場 | オリックス劇場 |
料金 | S席:12,500円 A席:10,500円(税込・全席指定) |
問い合わせ | キョードーインフォメーション 06-7732-8888 |
日程 | 2013年11月8日(金)〜11月30日(土) |
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会場 | 東急シアターオーブ |
料金 | S席:12,500円 A席:10,500円 B席:8,500円(税込・全席指定) |
チケット問い合わせ先 | サンライズプロモーション東京 0570-00-3337(10:00〜19:00) |
総合問い合わせ先 | パルコ 03-3477-5858 |